みなみのシュミや日常徒然を好き勝手に書き込む日記ブログです☆

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Snowboll
冬らしいお話♪
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 当たり前の呼吸として吸い込む空気ですら冷たくて思わずくしゃみが出そうになるが、何とかしてそれを押さえつけて空を見上げる。
 その目に映るのは雲を敷きつめたために月も星も見えない漆黒の空と、わずかな明かりの中ですらその存在を主張しながら静かに降る雪だった。本来天気のよい日であったのならあと数日で満ちる月が夜空を照らし出しているはずであったが。
 むずむずと鼻をくすぐる空気も、吐き出す時にはあたたまって白くなる。火や灯を一層引き立てる冬の証だ。
 外…というよりテラスでしかないが、彼はこの空間に一人でいるのが好きだった。自分の立場上どうしても人に囲まれる事ばかりなため、こうして誰にも気兼ねする事なく、人目を気にする必要もないのだから。
 だが、そんな中でもいてほしいと感じる人…もいる。
「こないかな…呼ぶ事でもできればいいのだけど」
 誰に言うともなく呟いて、今度は地上の風景に目を向ける。夜といってもまだ深夜までには余裕があるのでどの家庭にも明かりがともっているのが見てとれた。
「エンちゃん、こんばんわっ」
 彼から見て斜め後ろ辺りから声がする。自分の事をそう呼ぶのはただ一人。振り向くと予想通りの人物が笑顔で立っていた。
「えへへっ♪ここにいたんだ」
「こんばんは。ちょうど今、君がいたらいいのにと思っていたところだったよ」
「ホント?じゃましちゃわなくってよかった♪」
「こういう事で嘘を言っても仕方ないよ。よかったらこっちへこないかい?」
「うんっ!」
 今座っている横を示すと、その相手は嬉しそうにちょこんと座る。
「ね、今日はもうお仕事終わったの?」
「うん、一応は。もっとも、普段から大した事はしてないけどね」
「そうなんだ?じゃあ、今日はいっぱいお話できるねっ♪」
 二人並んでテラスの手すりに腰かけているのだが、嬉しそうに微笑む彼らを背後になっている室内の照明が照らし出している。
 照らし出されたその姿は…先にいた彼は緩やかに波を描く見事な銀髪を簡単にまとめた十代半ばの少年だった。色白でもあるので紅い瞳が一際印象的でもある。
 それに対する後からあらわれた相手は、この明かりがなかったらこのまま周囲の闇と同化してしまいそうな黒い髪をそのまま背中に流したこれまた少年と同じ年頃の少女だった。
 こんな彼らを端から見る人がいたら、そのあまりの好対照ぶりを微笑ましく思う事だろう。
「…お月さま見えないね。お星さまも」
「まあね。でも、雪景色も悪くないだろう?吹雪いているわけでもないし」
「うんっ、そうだ……くしゅっ」
 お互い景色に見入りながら話をしていたのだが、小さくくしゃみをする少女の方に視線を向けると鼻の辺りがかすかに赤くなっており、寒がっている様子がありありと感じられた。
「寒いのかい?」
「えっ…?あっ、うんちょっと……でも平気だよ?」
「私にはとてもそうだとは見えないけどね。…これ、着るといいよ」
 そう言って差し出されたのは彼自身が今まで着ていた上着だった。
「いっ、いいよぉ。そんなエンちゃんの服取っちゃうつもりで言ったんじゃないし」
「でも寒いんだろう?」
「エンちゃんだって寒いでしょう?」
「私はまだ慣れているから。ここの寒さにはね」
「うみゅう…」
「君が着ないって言っても私は着ないよ?だったら着た方がいいんじゃないかい?」
 少しからかうような口調で言ってみる。普段はこんな軽口みたいな事を口にする事ができないので不思議な感じがする。
 心地よい、とも思う。
「…にゃあ……じゃあ…借りるね」
「うん。はい」
 やっと納得してくれた相手に服を渡す。少しして袖を通し終わった少女の姿を見ると彼女にとってもこの服はちょうどいい大きさのようだった。
「あったかぁい…ありがとうエンちゃん♪」
 その笑顔を見ていると、嬉しいような安心できたようなはたまた悔しいような複雑な気分になった。何しろ彼女と身長・体型が似たり寄ったりだという証明のようだったから。一応自分は男なのだからそれなりに大きくいたいのに。
 しかし、まだ自分は成長するはずだと思い直す事にした。実際、一般的には成長期な訳であるのだし。
 そうして、再び夜景に目を向ける。
「きれーい…地上が夜空みたい……」
 目の前に広がる風景は、まさに今発した彼女の言葉で説明ができた。
 少女の台詞にふと聞きたくなって質問してみる。
「ねえ、君にはこの景色はどんな風に見える?」
「えっ…?どう見える…って?」
「何でもいいから。思ったままを言ってくれないかな?」
「う~んとね…今日は見えないから余計にそう思っちゃうのかもだけど、空にずっといるお星さまたちが疲れちゃったから地上に休憩しにきてるみたいな感じ。優しくて、ほっとする感じかな」
「そうか…まるで君みたいだね」
「にっ?私地上にきてるのってお休みじゃなくって任務だよ?……そりゃあ…地上も、地上のみんなも大好きだから嬉しくって楽しんじゃってるかもだけど…」
 不満そうではあるが、はっきりと否定できないために最後の方は声も小さく口ごもるように反論する。
「ね、じゃあエンちゃんにだったらどう見えるの?」
「前に言った通りだよ。この灯りの中で暮らしている人々の姿を考えているだけで安心できる…どうも私はこういった宮廷とかが苦手なようだし」
「エンちゃん好きだもんね、ここからの景色」
「うん、とてもね」
「そういえば…雪ってどうしてこう光ってるみたいに見えるんだろ?」
「どうしてかな…言われてみればそうだね。気がつかなかったよ」
 何気なく目についた事、気になった事を考える事なく口にする。迂闊な事を言えない地位に就いている少年にとって、この少女は肩書きのない自分を見て接してくれる貴重な相手である。そして、その全てにおいてまっすぐな姿は見てて飽きる事のない、心地よいものだった。
 ふと彼女の方に再び目を向けると、小さく歯が鳴っていた。頬も寒風に吹きさらされて真っ赤である。それでも、目は風景に見入っていて彼が見ている事に気付かない。
「…中に入らないかい?」
「えっ…もう?もうちょっと見ていようよ?」
「そうは言うけど…君が体を壊してしまうよ?」
「へっ、平気だよおっ」
 流石にいい加減寒いかと思って室内へと誘ってはみたが、まだ見ていたいらしく断られてしまう。
 確かにこの帝都の夜景は一見の価値があるし、しかも今日のように冬の澄んだ空気によって輝きを増した光と決して降りすぎる事なく舞い降りる雪…普段よりも見ごたえがあるのは確かなのでこの少女…天使が夢中になるのも無理はない。
「でも、冷えているよ?……ほら」
 ムキになりかけている少女の様子に小さく笑いかけながら、彼女の頬を両手で包み込む。
 自分の方も冷えてはいるが、手先は却って熱を帯びているので温度差を感じてほしいと思ったのだ。
 だが、予想以上に冷えていたので、そのあまりの冷たさに彼の方が驚いたのだがそれは表に出さなかった。
「わぁ……何か、ほっぺがじーんってするよぉ…」
「ね?それだけ今サウスが冷たくなってるんだよ?」
「うんっ…」
 少しずつ温度差が減っていく。そんな事を二人とも一緒に思ったのか、視線が合うと同時ににっこりと微笑む。
 だが、逆にその笑顔が彼を我にかえさせた。かわいい…かどうかはそれこそ個人個人の判断に任せるが、手の届くくらい近くに女の子がいて、しかもその女の子の頬に触れつついるという状況に今現在なっていると。
 そう思い至ると、にわかに身動きできなくなってしまった。天使の方はこれに気づかずにいるが、果たしてそれはいい事なのかどうなのか。
(どうしよう…困った……)
 動くに動けなくなってしまい、ここからどうしたものかと悩んでしまう。
「エンちゃん…どうかしたの?」
「えっ?う、ううん別に」
 硬直してしまったかのようになった彼を見た少女が不思議そうに聞いてくる。だが、ますます頭の中は混乱しそうになっていた。
 その時。
「天使さま!!」
 第3の声がして、少年の目の前に小さな赤い色があらわれた。その驚きのお陰で硬直が解けた。
「あ、リンクス」
「『あ、リンクス』じゃないでしょう?『あ、リンクス』じゃ。もう何時だと思ってるんですか?明日だって早いのに」
 目の前にあらわれたのはどうやら妖精の髪だったらしい。少女に文句…というか小言を言っている。そう言われてふとポケットに入っている懐中時計を取り出して見てみる。確かにそろそろ『遅い時間』になってきていた。
「天使さまはちゃんと寝ないと朝起きても眠そうになるんですから。ほらほら、帰りましょう?」
「うみゅう~…」
「うっ…そ、そんな風にしたってだめです。さ、それもちゃんと返しましょうね」
「はーい」
「あ…帰るのかい?」
「うんっ……でもでも、またきてもいい?」
 差し出された上着を受け取りながら聞いてみたら反対に質問が返ってきた。どこか不安そうにじっと見つめられているのでどこか落ち着かない感じがするが、それでも笑顔で返事を返す事ができた。
「もちろんだよ。君だったら歓迎するよ」
「ホント?ありがとうっ♪」
「うん」
「あーほらほら天使さま、帰りますよ?」
「うんっ、じゃあエンちゃん…おやすみっ」
「おやすみ」
 天使が飛んで帰って行く姿を見送っていると、ふと妖精が非友好的な表情で目の前にいた。てっきり彼女と一緒に帰ったと思っていたのに。
「エンディミオンさま…」
「えっ…うん?」
 どうかしたのかと聞こうと思った瞬間、リンクスはちっちゃな身体の全身を使って『あかんべー』を彼に向けた。
「!?」
「ふーんっだ!!」
 あっけにとられる彼をそのままにあらわれた時同様に忽然と妖精の姿が消えた。のんびり飛ばずに一気に天使に追い付くつもりらしい。
 ふと我に返ると苦笑を浮かべる。
「ライバル…と見なされたかな。まさかね」
 そんな風に思われるとは露ほども感じていなかったが、実はその通りだったりする。もっとも、彼の方だってそう思い至っただけで充分まさかどころではないものであるが。
「…さ、風邪を引き込む訳にもいかないし。私ももう寝ないとね」
 誰に言うでもなく口にして、一度空を見上げてから室内に戻って行った。
 その頃天使は。
「あれっ?リンクス?」
 てっきり自分と一緒にきていると思ったのに、その姿が見当たらない。
「先に帰っちゃったのかな?」
 そう呟いて自分も飛んで行かずに魔法で移動してしまえばいい事にはたと気づくが、そうはしなかった。何となくゆっくり戻りたかったから。
「………」
 両手を、両腕を広げてみる。まるで雪も空も空気も、全てを受け止めようとするかのように。
 冷たい風に衣服と髪をはためかせながら彼の事…先ほどの事を思い返してみる。
 リンクスがくるほんのちょっと前、少しの間だったけど会話も動きも止まってしまったのは何故だったのだろう?
「エンちゃん…ほっぺも赤かったし、やっぱり寒かったのかな?」
 それがまったくない訳ではないだろうが、どうにもずれた結論に達していた。
「平気だって言ってたからついつい服を借りちゃったりとかしちゃったけど…悪い事しちゃったなぁ…うみゅう……」
 正解ではないのだが自分の達した結論を前提にして思考を展開し出している。まあ、他の発想が出てこない限り仕方ないという気がするが。
「…今度遊びに行く時、何かお菓子持って行こうかな?作りたてのあったかいの♪そしたらきっと、外にいても大丈夫だよね」
 楽しそうに満面の笑みを浮かべる。その笑顔は、もし見る者がいたらとても幸せな気持ちになれそうな表情だった。
「どうしてなのかわかんないけど…今、とってもあったかいもん。これって……こころがぽかぽかしてるのかな?エンちゃんも同じようにぽかぽかだといいなぁ♪」
 白い息を弾ませながらの呟き。
 今はこの雪も暖かい綿毛のように感じられた。
 それ程に心が満たされているから。
 それ程に気持ちの灯がともり始めたから。
 …ただ本人はその事に、気持ちに気づいていなかった。

おしまい

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