みなみのシュミや日常徒然を好き勝手に書き込む日記ブログです☆

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raspberry bell
昔書いたエンちゃんやベルぜーのお話(頂き物も含めて)を置こうぜキャンペーンを展開してみようと思います♪まずはこれからーv
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 この場の人々が皆おびえ、驚き、そしてどこか安堵した様子で囁き合うように会話をしている。今、目の前で起こった重大事件。今のこの状況がそれを目撃したせいであるのは誰の目にも明らかだった。そして、誰もがどことなく興奮してもいた。
 ここ、グローサイン帝国の首都レイゼフート。その皇宮で起こった皇帝の暗殺未遂事件の会場となった夜会中の大広間の中に何故か一人だけ場違いとしか思えない普段着姿でいる人物がいた。誰と話すでもなくつい今し方起こった事件の犯人が連行されていった扉と、その犯人に狙われた人物…皇帝が退出して行った扉とを見比べているその人物の表情には、『心配』のひとことが刻まれている。
「レイレイ…エンちゃん……うみゅう、エンちゃんが殺されちゃわなくってよかったけどレイレイが捕まっちゃって死んじゃったら絶対にダメだよおっ!助けなくっちゃっ!!」
 この言葉を聞いたら衛兵が飛んできそうな台詞であるが、この少女のつぶやきを聞き咎めた者はいない。
 それどころか、こんなにも周囲から浮いている格好であるというのに彼女に注意を向ける者もいなかった。それもそのはず、実は彼女は人間ではない。故あって地上にきている天使なのである。今もその天使としての力で自分の姿を消しているので気づく人もいないという訳であった。
「うみゅ~…急がなくっちゃ……でも、さっきエンちゃんに気づかれちゃってたのかも」
 実は先程の暗殺未遂の加害者はこの少女の友人で勇者として彼女と共に戦う人物で名をレイラ・ヴィグリードといった。
「……にゃあ…でもでもレイレイ助けたらすぐに出なくっちゃダメだし…エンちゃんの方、行ってみようっと!」
 そう決断するや否や、広間から姿を消したままで出て行った。

「ふう……困ったな…」
 自室に戻った皇帝エンディミオンは、人払いをして一人椅子に腰掛けて溜め息をついていた。が、ふと顔を上げて扉の側に視線を向けると優しい口調で声をかける。
「いるんだろう?今は私しかいないから出てきても大丈夫だよ、サウス」
 その言葉が発せられると、今彼が目を向けている空間に先ほどの天使が姿をあらわした。
「やっぱりいたね。さっき彼女の側に君がいるような気がしてたんだ」
 少女に笑いかけながらそう言う。
「にゃ…じゃあやっぱりさっき目が合っちゃってたのは気がつかれちゃってたからなんだ」
「目が合っていたかどうかまでは私にはわからないよ。何しろ君の姿は見えなかったんだから」
 そう、実は先頃レイラが取り押さえられていた時にその場で彼女を処刑しようとするアルベリックを止めたのが彼エンディミオンだったのだが、その時ほんのわずかな間空中に視線を向けた。そしてそれはちょうどこの天使がいる辺りだったのである。
 そしてそれが気になったために、今ここに彼女がいるのであるが。
「でもね、今は慣れちゃったのか平気だったけど、前に初めてエンちゃんに気づかれちゃった時はびっくりしたよ?」
「そうかい?ただ何となく人の気配を感じるから…」
「グランドマスターだけだったんだもん。気づかれちゃった事があるのって」
「グランドマスター!?あの、魔導士ギルドの…?」
「うんっ」
 至極あっさりと頷く。
「アイリもフェイフェイも『グランドマスターくらいになら気づかれてもしかたない』って言ってたからそう簡単には気づかれないって思ってたし」
「そう簡単に言われても…私の方だって驚いたんだよ?ルディしかいないはずなのに人の気配がする、その事を言ったら突然その後ろから女の子が出てくる、しかもその女の子は天使だって言うし」
「うみゅう…でもでも、ホントの事だもん」
 少し不満そうに言う少女に苦笑を向けて話を続ける。
「悪い、と言っているわけではないよ。ただ更にその天使と彼とが友人だって事に驚いただけだから。だってそうそう天使には会えないものだし、その上仲良くなるなんて事ができるとは考えもしなかったからね」
 『勇者』という存在を言わないでいる以上そういう説明になる。曰く、偶然出くわして気が合ったため…という感じに。幸いというか彼女は真面目に戒律や掟を…特に地上と人にそうそう簡単に関わってはいけないという事は守れそうにないタイプに見受けられるので全然不審に思われずに済んでいた。
「…にしても、君はルディだけでなく彼女…騎士レイラとも知り合いなんだね」
「うんっ、ルゥもレイレイも、もちろんエンちゃんだって仲よしだもんっ!みんなみんな大好きだよ♪」
 にっこりきっぱり迷いもなく言われて軽く赤面してしまう。
「あ、ありがとう…あ、立ってないで座らないかい?私ばかり座っているのも何だし。残念ながらお茶は出せないけどね」
「ううんっ、平気だよ?でも皇帝さまってお仕事ってば変なの。ルゥといっしょの時もそうだったけど、どうしてお話してるってみんなに知られちゃダメなの?」
 近くの椅子に腰掛けはしなかったが、彼の側へと移動しつつ疑問を口にする。
「どうしてなんだろうね、私もよくわからない。でも知られたせいで会えないとまでいかなくても会いにくくなりたくはないしね」
「そっかぁ……それにしても、どうしてエンちゃんには私がいるってわかられちゃうんだろ?ルゥといた時も今日もちゃんと隠れてたはずなのに」
「さあ?でも私は嬉しいよ。君の気配がわかるおかげで、こうして一緒に話ができるからね」
 その言葉に嬉しそうに笑顔になる少女を見て、彼もまた笑顔になる。
ほんのわずかな間、今本来の緊迫した状況を忘れてしまうような穏やかな空気が漂う。
「ルディは元気かい?」
「……う~ん…ちょっと、元気じゃないかも」
「…え?どうかしたのかい?」
「あっ、病気とかってわけじゃないんだけど…ルゥね、この間お兄さんが死んじゃったから…」
「あ…そうか。そうだったね、そう私も聞いていたっけ。すまない、愚問だったね。ユーグ陛下については私からもお悔やみ申し上げるよ」
「うんっ…ルゥにそう言っとくね。エンちゃんとルゥももっともっと簡単に会えたらいいのにね」
「うん。でもまた会えるよ。今はお互い忙しいけど」
「そうだねっ♪」
「そうだよ。しかし…この侵攻が止まった時、まだ彼が私を許してくれるのなら、だけどね…。……それより、一つ頼まれてくれないかい?」
「えっ…?何?」
 今までの和やかで気楽な雰囲気が影を潜めたその口調に、少女もまた少し緊張して彼の話に耳を傾ける。
「こんな事頼むまでもないのかもしれないけど…今、ここの別室に捕らえられているレイラ・ヴィグリードを助け出して逃げてくれないか?」
 思いもかけない言葉にきょとんとする。
「もちろんレイレイを助けるけど…逃がしてくれるの?」
「ああ、彼女の父親…ラウル・ヴィグリードには恩があるから…その忘れ形見であるレイラは処刑したくない。ただ…大逆未遂ともなるとどうしても罪を減じる事ができないから」
「恩…って?聞いてもいい?」
 ふと口をついて出た少女の問いに小さく微笑んで答える。
「構わないよ、別に秘密でも何でもないからね。新しい皇帝が選出される時のごたごたと私が推された理由は聞いた事があるかい?」
「……ん~っと…聞いた事あるような気もするけど…でも思い出せないよぉ。…ごめんね」
「謝る必要はないよ。結局のところただの覇権争いなだけだったから。私は歳も下だし、この通り体も丈夫という訳ではないから一番皇帝位から遠かったはずなのだけどね。…この髪と目がたまたま初代皇帝-紅月王と同じ色だからという理由だけで皇位継承の争いに担ぎ出されてしまったんだ」
 その当時の事を思い出したのか少しだけ辛そうな表情を浮かべながら腕を伸ばして天使の髪をなでるようにそっと触れる。天使は何も言わず言葉の続きを待つ。
「…こんなこじつけとしか聞こえない理由でしか私が皇帝に相応しいと、推していたクロイツフェルド大公にも言えなかっただろうね」
「…エンちゃん…」
 自嘲気味の口調と表情を見せられて、天使の表情もわずかに曇る。それに気がついたのか笑顔を作り、それを彼女に向ける。
「それで、細かいところは省くけど私が皇帝になる事がほぼ決定した頃にラウル将軍が『髪や目の色で皇帝が決まるものではない』と異を唱えてくれたんだ」
「あっ…確かそれであーる君とレイレイのお父さんが決闘する事になっちゃったんだっけ?」
「そうだよ。まあここから先は彼女から聞いた方がいいだろうね。そういう訳で私は、あの中でただ一人ああ言ってくれた事を恩に感じてるんだ。もともと帝位につきたいなんて少しも思っていなかったから」
「…そうなんだぁ…うんっ、じゃあ私レイレイのとこに行くねっ」
「うん、私の方もすぐには追手が出ないようにするから。…できれば首都どころか国からも出た方が確実だろう」
「うんっ、わかった」
「でもそうなるときっと…また………会えなくなるね」
 寂しげにつぶやく少年に、少女はにっこりとした笑顔を向ける。
「大丈夫っ!また会えるもんっ、絶対っ!!だって私もエンちゃんに会いたいし、それに『会える』ってそう思ってたらホントになるんだよっ♪」
 あまりにも当然といった感じで断言する彼女に思わず一瞬あっけにとられるが、そのあまりにも無邪気な笑顔につられて彼もまた微笑む。
「そうだね。サウスが言うと本当にすぐ会えそうだ。だから私は君が好きだよ」
 何気なしに口にしてから、自分が何を口走ったのかに気がついた。
「あっ…」
 別に慌てる必要もないはずなのだが、何故か急に落ち着かない気分になってしまう。
 一方、天使の方もいつもとはまた微妙に違った表情を浮かべて彼を見ていた。
「………あれっ?…何でだろ…?」
「え…?どうかしたかい?」
「うん、あのね……私ね、みんな大好きだからみんなに好きって言ってもらうのがすっごく嬉しくって好きなんだけど…」
「だけど?」
 聞き流してほしいと感じていた事を忘れて問いかける。もし、もしも自分に言われるのだけは例外的に嫌だとか言われるのではないかという不安を頭の中で駆け回らせながら。
 少女の方もどう言えばいいのかわからないらしく噛みしめるようにゆっくりと言葉を発する。
「どうしてなんだろ…エンちゃんに言ってもらうのがすっごくすっごく、すっごく嬉しい…。誰に言ってもらうより、いっぱいのみんなに言ってもらえるのよりも嬉しくって、何か…どきどきする。どうしてなのかな?」
「えっ…?あ、ありがとう…そう感じてもらえるなんて……私も嬉しい」
 少しだけはにかんだような今の天使の表情と言葉に、彼はほんのわずかな間何も考えられなくなってしまっていた。それでも、照れ笑いと共に言葉を発する。
「ホント?それってすっごく嬉しいよおっ!!エンちゃん大好きだもんっ、エンちゃんが嬉しいと私も嬉しくなっちゃうから、もっともっと嬉しいもん!」
「ふふっ、嬉しいがたくさんだね」
「うんっ!!今度また会った時はもっともっといっしょにいようねっ♪それじゃあ………またねっ」
 まだここにいたいという気持ちを自ら振り切るような勢いできびすを返したかと思うと、もう次の瞬間に彼女の姿は消えていた。室内を軽く見回しても気配を感じる事はない。
「行ってしまった…か。では私も準備しておかないと。失敗は許されないのだから」
 彼もまた動き始める。救いたい人を救うため、そしてあの天使に再び会った時に辛い思いをしないでいるために。
 互いに共にいる事を望んでいるという確信を持つ事ができたことは、さっきの事件の影響で少し熱が出てきたこの体にも力を与えてくれる。
「今度は、もっとゆとりがある時に会えるといいな…」
 だが彼は知らない。この直後に天使が打ち倒される事を。
 また、彼女の方も次に彼に会えた時には声も交わす事ができないという事を知る由もなかった。
 今はただ、再会した時に胸を張って笑顔でいられるように自分ができる事を夢中でする二人だった。

 胸の中の小さな想いを信じて。



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