みなみのシュミや日常徒然を好き勝手に書き込む日記ブログです☆

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天使に近い夢
これ、同人誌用に書いたお話ですが♪
通称「ごほうびバージョン」ですv

 開け放たれた窓から吹き込む風がカーテンを揺らす。
 入って来た風の心地よさに目を細め、シーヴァス・フォルクガングはそちらへと目を向ける。
 風の形を表現しようとしているのか、一定の形に留まらないレースのカーテン。そのむこうに広がるのは高く澄んだ空、色づき始めた木々。
 そろそろ窓を開けておくのも終わりだな、と心の中で呟いた瞬間、柔らかな声が耳を打った。
「チェック」
 小さな軽い音と共に発せられた単語に、慌てて視線を元に戻す。
 目の前には小さなテーブルがあり、ティーセットの他にはチェス盤が置かれている。その配置を見てみると、確かに自分の白い駒が相手の黒い駒に詰まれる寸前になっていた。
 いかさまを行った気配は一切なく、さりとてこの動きは見事としか言いようがなかったので素直に相手に告げた。
「流石だな。ここまで手応えのある相手はそういないのだがな」
 笑いながらあっさりと言ってくるシーヴァスに、相手も苦笑しながら答える。
「チェスはよくやっていましたから。とはいえ、そちらもかなりお強いですね」
 社交辞令ではなく、心底そう思っているようだった。褒められるのは悪い気がしないが、自分よりも若い…それこそ少年と言って差し支えない相手に負けかけているのも事実なので少しばかり面白くない。
 やや皮肉な声音で応える。
「それこそ、『若い者には負けられない』と言ったところか?」
「そんな歳でもないでしょうに」
 少し呆れたような口調で返してくる相手の発言を遮るように、今し方目に入った時計の時刻の件を告げた。
「おっと、そろそろ時間だな。支度しておいてくれ」
「はい、シーヴァス様」
 やや強引なその切り返しに笑顔で返事をして、相手は部屋を出て行く。
 扉が閉まり、また風が入ってきたと思うと明るい軽やかな声が室内に響いた。
「シーヴァス、こんにちわっ♪久しぶりだねっ」
 声と共に現れたのは彼がよく知っている少女だった。窓枠に腰を掛け、足をぷらぷらとさせている姿はどこにでもいる普通の少女にしか見えないのだが、背にある翼が唯一彼女が普通の人間ではないと語っている。
 天使。それがこの少女だった。
 この少女にはもう年単位で会っていなかった。以前共に旅をしていた頃よりも背が高くなり髪も伸びている。まだまだ子供の部分を多大に残しているが、それでもわずかに大人びたように思える。
 ただ、それは今の彼女の事情を知っているせいなのかも知れない、と彼は思った。
「ああ、君か。そちらは相も変わらず無意味に元気だな」
 なので、こちらが知っていると知らないのを理解した上で少し意地の悪い挨拶をしてみた。
 その言葉を聞いた天使はほんの一瞬、注意深く見ないとわからない程度に表情を硬くしたが、すぐに元の笑顔に戻る。
「……うんっ、だって元気が1番!だよ?」
 当然、その変化を見逃すシーヴァスではなかった。とはいえ、それを指摘するほど無粋でもない。気付かないふりをしながら言葉を重ねる。
「そうだな。しかし、どういった風の吹き回しだ?あれ以来一度も顔を出しに来た事もなかったというのに」
 質問をされた事で本来の目的を思い出したのだろう。あっと呟いて窓枠から降り立ち、目的を告げる。
「ミカエル様がね、シーヴァスにおつかいしてきてって」
「お使い?」
「うんっ、このお手紙渡すようにって」
 目の前へと近付いて一通の封筒を差し出す。差し出されたそれを素直に受け取って、誰と話に呟いた。
「手紙…か」
 こっくりと頷きを返してくる天使はその動作で思い出したのかさらに言い募る。
「うん。あと、返事をもらってくるようにって言ってたよ?」
 手紙を広げながらも、目の端に入った今の仕草に、昔を思い出しながら小さく笑う。
「そうか。では待っているといい。今茶を運ばせよう」
「はーいっ」
 天使がテーブルについたのを見届けると、シーヴァスは卓上にあるベルを鳴らす。
 よく通る澄んだ音が響く。
 ベルを元に戻すとシーヴァスは手紙を読み、その様子を何とはなしに天使が見ている。
 少しの間その状態が続いていたが、その均衡を破ったのは部屋の扉からするノックの音だった。
「ああ、いいぞ」
 視線を手紙から離す事無く何気ない口調でシーヴァスが返事をする。
「失礼します」
 入室の許可からすぐに声がして、扉が開く。
 だが、その声がした瞬間天使はテーブルから立ち上がっていた。
「この…声…」
 室内に入ってきたのは、先程天使が来る直前までこの部屋にいた相手だった。
 まだ歳若い少年で、太陽の光に見事に輝く銀色の長い髪を簡単に束ねている。お茶一式をワゴンに乗せ、紅い瞳の表情は穏やかな笑みを浮かべていた。
「………エンちゃんっ!」
 彼が「お待たせしました」の言葉を発するよりも早く、少女が飛びついた。ぶつかったのかと思うくらいに勢いよく、それでも少年は転ぶ事もよろける事もなく彼女を受け止めていた。
「エンちゃんエンちゃんエンちゃん…!ホントに、ホントのエンちゃんだぁ…」
 ただひたすらに彼を呼ぶときの名を口にし続ける。
 相手の少年も、少女と見紛うほどに華奢ではあっても女の子1人を支えられないはずもなく。飛び込んできた天使を抱きとめると、その背中をあやすように軽くたたきながらそれに応える。
「うん…うん、ちゃんといるから…嘘じゃないよ」
「エンちゃん…」
「ああ、ほら泣かないで…」
 目の端に涙をにじませ出す彼女の様子に、思わず慌ててしまう。
 相手は、その言葉に涙をぐしぐしと勢いよく拭いながらも言葉を続けた。
「だって、だって…もう会えないって思ってたから…嬉しくって……夢じゃない…よね?」
「うん、夢じゃない。現実だから…私も、こうして君に会えるなんてあの時は思ってもなかったよ」
「…でも、どうして?それに、アルカヤじゃなくってインフォスでシーヴァスと一緒にいるの?」
「それはね…」
 心底不思議そうに聞いてくる天使の問いに答えようとしたとき、ややわざとらしい咳が響いた。
 声がした方へと、自然と二人の視線が向かう。
 その先にはやや置いて行かれたような風情を漂わせたシーヴァスが立っていた。
 彼は、視線が向いたのを確認するとしてやったりといった表情を浮かべ、やや皮肉っぽく声をかけてきた。
「二人の世界の時間は終わったかな?私もいるという事をやっと思い出したようだな」
「あっ、ごめんね…でも、二人の世界…って?」
「済みません、忘れた訳ではないのですが…つい」
 またもや息ぴったりに同時に謝ってくる。最早苦笑を浮かべるしかない状態である。
「責めてる訳ではないのだが…まあいい」
 シーヴァスは少年のすぐ横に近付いてきて、天使に向き直って言葉を続ける。
「知っているとは思うが…改めて紹介しよう。先日から私の補佐として主に秘書業務を担当してもらっている、エンディミオンだ」
「にっ?」
 予想もしてなかった言葉が出てきたので、思わず天使の目が点になった。
 そんな少女の様子を見て、エンディミオンは小さく笑う。
 彼らのそんなほのぼのとした光景を見ているのも悪くはないのだが、このままでは一向に話が進まない。
 天使の目の前に先程の大天使からの手紙を突きつける。
「シーヴァス、これは?」
 きょとんと聞いてくる彼女に、わざとそっけなく言う。
「さっきの疑問の答えだ。読んでみるといい」
「いいの?シーヴァスへのお手紙でしょ?」
「構わないさ。そもそもこの手紙自体が仕掛けの一端だからな」
「?」
 さっぱり意味が分からなかったが、それでも素直に目を落として読み始めた。
 そこには見た事のある字で書かれた文章が連なっていた。
『私達の可愛い天使へ。
この手紙に目を通す頃には、大層な驚きを体験している事と思う。我ながら大掛かりな仕掛けを施したものだと自覚しているので、むしろ驚いてもらっていたいものだがな。
エンディミオンの復活。この不可能を可能にした手法についての種明かしをしよう。
まず、あの戦いの後すぐ彼の体をインフォスに運び、レミエルを一時的にフロー宮に復帰させる。アルカヤでは不可能だったが、インフォスでなら勇者を黄泉還らせる事が可能だからな。つまり、かなり強引ではあるがエンディミオンをインフォスの勇者という事にしたという訳だ。
多分、ここまで読んだ時点で何故そこまでして彼を復活させたか不思議に思っているだろう。
理由は簡単だ。お前はインフォスに続いてアルカヤも救う事に成功した。そこまでの功績を上げた天使に対して、何も褒賞を与えないという程天界もケチではないのだからな。
お前がエンディミオンの死に衝撃を受けていたのはよくわかっていたし、ラファエル及びガブリエルとの両名と協議した結果、こういう形になったという訳だ。
何故勇者達の中でもシーヴァスの所に預けたのか、気になっているかもしれないが…まあ、あれだ。誰の所にするか迷ったので、籤を作ったら彼に当たったというだけの事だったりする訳で。深くは気にするな、うん。』
 そこまで読んで顔を上げると、少年が苦笑しながら補足をした。
「それで、ただ居候しているのもなんだし…生きていく為に何かしなくちゃと思って悩んだんだけど…」
「その頃はちょうど秘書…仕事の補佐が必要になっていてな。試しに手伝ってみてもらったところ、かなりできるというのが判ったので正式に就いてもらう事に相成ったという訳だ」
「まあ…以前の経歴が役に立った、って事かな」
「処理能力にも問題なし、しかも教えるまでもなく宮中作法も完璧。はっきり言って儲けものだと思ったぞ?」
 一人うんうんと頷く。
「それじゃあエンちゃん、これからずーっとここに?」
「うん、絶対とは言いきれないけど…仕えさせてもらおうかな、って」
「『仕える』と言われると微妙な気もするがな。以前の経歴が経歴だけに…」
「それは関係ないでしょう?世界も違うし一度死んでいるんですから」
「それもそうだがな。まあ私的な時はそうでもないし」
「ええ、好意に甘えさせてもらっています」
 確かにそのやり取りは気心の知れた同士のものだった。
「それで?そちらはどうするのかな?」
「えっ?」
 天使は話が自分に振られた事に際し、予想していなかったのか再びきょとんとした表情になる。
「…手紙の最後の部分、まだ目を通していないのか?」
 こくんと頷きを返し、そのまま再び視線を手紙に戻す。
「えーっと…」
『と、いう訳でだ。決めつける訳にも行かないので一応聞いておくが…このまま天界に帰ってくるか、それともエンディミオンと共にいる為に地上に残るかどちらを選ぶ?決めるのはお前自身だ。
追伸:貴女が地上に行く事を選ぶのなら、天界も寂しくなるでしょうね。それでも、皆貴女の笑顔と幸せを願っていますよ。ミカエルだけでなく、私達もね』
「ミカエル様、ラファエル様…ガブリエル様…みんな……」
 大天使達、天界の面々の優しさに少女は手紙をきゅっと抱きしめる。
 そんな少女の姿を穏やかな表情で見守っていたエンディミオンだったが、一つ深呼吸をすると厳しいくらいの表情を浮かべて彼女へと言葉を紡いだ。
「…もし、もしだけど…よかったら…その…」
 彼の言葉を遮るように、同じく真剣な表情になった天使が口を開く。
「エンちゃん…エンちゃん、あのね」
 その気迫に押されるように、少年は口をつぐんで彼女の言葉を待つ。
 彼の様子にも気がつかないほど必死に言い募る。手紙を胸の部分で握ったまま、頬には朱が差し緊張しているのかややどもりつついる天使の姿はいつになく大人びて見えた。
「私、エンちゃんと一緒にいたい。ずーっと一緒がいいっ!ね、それって…ダメ…かな?」
 少し上目遣いになって聞いてくる。はっきりいって、どういった形であろうとわずかでもこの少女に対して好意を持っていたら逆らえるはずもないほどの破壊力を持った仕草である。
 思いきり内心でノックアウトされながらも、言葉の内容を聞き逃しはしなかった。
 自分の心音が高鳴っているのが聞こえる。にわかには信じられない言葉だったけど、それでもその音が真実だと、夢ではないのだと少年に使えていた。
 だから、言わなくてはならない言葉がある事を思い出した。
 天使に負けず劣らず、耳朶まで赤くなって熱くなるのを自覚しつつもゆっくりとではあったがエンディミオンは答える。
「それは…それこそ、今私が言いたかった事だよ。君を天使でいられなくしてしまうけど…それでも私といてくれるかい?」
 一歩、彼女に近付いて天使の手を取り両手で包むように握る。
 手を取られた少女は、一瞬驚いた表情でエンディミオンを見たが、すぐに満面の笑みを浮かべて一歩を詰め、彼へと飛び込みながらはっきりと答えた。
「…うんっ!」

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