みなみのシュミや日常徒然を好き勝手に書き込む日記ブログです☆

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鏡の森
発掘した作品~wベルv天ですね、はい
 長い銀髪を簡単に一つにまとめてみる。
 これだけでも幾何かは騙せる筈だ。
「所詮人は己の見たいものしか見ないもの…あとは仕上げをごろうじろ、だな」
 そこにいるのは一人の少年。彼はそのまま小さく笑みを浮かべた。
 瓦礫がうず高く山を作っている。
 ここには以前、塔が立っていた。だが、現在はこの通りになっている。
 訪れる人もいないこのさびしい場所に、今は珍しく人がいた。
 その人物は瓦礫の側にしゃがみ込むと、祈りを捧げるように手を合わせ目をつむってじっとしていた。
 少しして、目を開けて立ち上がった人物は風にあおられる黒髪を軽く押さえながら誰に言うともなく呟く。
「セレニスのお姉ちゃん…助けられなくてごめんね…」
 風が強くなる。その寒さに小さくくしゃみをするとその場を離れだした。
 一人でとぼとぼと歩いているのはまだほんの少女。
 彼女は先ほどの廃墟と街をつなぐ唯一の道を歩いていたが、その足がふと止まった。
 何か意外なものを見つけたのか、驚きに目を見開き息をするのも忘れたかのように立ち尽くす。
 そして、その興奮が納まらぬうちに道の脇、木立の中へ走りだしていた。
「エンちゃん!」
 木立の中にいた人物の側へと走りながら声をかける。
 かけられた相手はその声に振り向き、走り寄ってくる少女に笑顔を見せた。
 だが、その笑顔を見た瞬間彼女は立ち止まった。
 あと一歩踏み出せば彼に飛びつく事もできる距離だというのに。
「…?どうしたんだい?」
 困惑したように問いかける少年に、少女は首を横に振る。
「違う、違うもんっ!エンちゃんじゃないよぉ…誰、なの?」
 まるで小さな子供のようなその様子に、少年は大きく目を見開く。
 そして次の瞬間には笑顔を消し、素早く一歩踏み出した。そうして少女の左手首を掴んで移動を封じる。
「にゃ…?」
「…何故、解った?私がエンディミオンなどではないと」
「…わかんないけどわかったよ?だって、ホントにエンちゃんじゃないし…だぁれ?」
「ふむ…勘は悪く無い様だな…」
 きょとんといまいち緊張感に欠ける少女を見やりながらひとりごちる。
 そうしてエンディミオン…彼の姿をした何者かは先程とはうって変わったぞっとするような笑みを浮かべた。
「天使よ…わからぬか?確かに私はあの者ではない。が、この身は間違いなくお前が望む者。エンディミオンだぞ?」
「えっ…?」
 彼の言葉に目を見開く。穴が空くのではないかと思うくらいに少年を見つめると、天使は声を発した。
「じゃあ…じゃあ…、セレニスのお姉ちゃん!?」
 ずっコケた。
 それでも彼女を掴んだままだったのだから随分と器用なこけ方をしたものである。
「た、確かにその者であった時もあるが……それも違う」
「…?」
 何とか立ち上がりながら言葉を続ける。
「…知りたいか?私が何者かを…」
「……」
 彼の質問に天使は黙って頷いた。
「誰なの?」
 少女のあまりにも無邪気で素直な姿にほくそ笑む。
 あっさりと罠にかかった獲物がここにいる。
 その感想を表に出さないように注意を払いつつ答えた。
「よかろう、教えてやる。私の名はベルゼバブ、お前達天使とは対極にありし者だ」
 聞き慣れない名前に小さく首をかしげた。
 その仕草がまた彼に勝利を確信させる。
「ベルゼバ…ブ?」
「そう。それこそ我が真の名…どうだ?知った感想は」
「感想…って?う~んと…ベルゼバブだからベルぜーだね」
 再度ずっコケた。
「…何でそうなる」
「えっ?だってベルゼ…って舌かんじゃいそうだし、長いでしょ?」
「…まあ決して短い名ではないが……お前の頭の中身はどうなっているんだ!?」
「?」
 さっぱりわかっていない相手に思わずツッコミを入れてしまう。
「い…いやいかん。この天使のペースに巻き込まれる訳には……」
「ベルぜー?」
「…まぁ、よかろう。好きに呼ぶがいい…が、知った以上はお前をこのままにはしておけぬがな」
「?このままにできないって?」
「解らぬか?愚かな天使だ」
 いまだ掴んだままにしていた少女の手首に力を込める。
「痛っ…!」
 その加えられた力に思わず声がもれた。
 わずかにゆがめられた表情に、ベルゼバブは満足げに笑う。
「もう帰る事は不可能、という事だ。私がさせない…どうだ?理解できたか?」
 一つ一つ、言葉を染み込ませるかの様に紡ぎ出す。
「帰れ…ない…の?」
「そうだ。最早お前は私の手中にあるのだからな…」
 空いている方の手を使って、少し呆然とした表情を見せる天使の髪に指を絡めた。
 しばしの間そうしてくすくすと笑いながら少女の反応を待つ。すると、大きくはないがはっきりとした声がした。
「…やだもん」
「……。は?」
「そんなのやだもん。帰れないなんて、そんなのダメだもん。いやだもんっ!」
 きゅっと拳を握りしめながら言い切る。
 だが、真摯な天使の言葉も姿勢も目の前の彼には効果がないようだった。
「お前の意思など関係ない」
「…あれっ?そういえば…エンちゃんがベルぜーってことは、エンちゃんは?エンちゃんどこなの?」
 ふと、ある事に気付いて問いかけてくる。
「やっとそこに思い至ったか。解らぬか?」
 喉の奥で笑いながら逆に質問をする。
 問われた少女は至って素直に頷いた。
「うんっ、エンちゃんどこ?」
 繰り返される問いが耳に入った瞬間、少年の顔から笑みが消えた。そして左手も使って天使の両手首を握り締めていた。
「にゃ…っ!?」
「エンディミオン、エンディミオン、エンディミオン!何故そこまであんな者だけを気にかけるのだ!!」
「ベル…ぜー…?」
 突然激昂した相手を半ば呆然と見やりながら、何とか声にする。
 自分に向かって強い怒りを見せるベルゼバブの瞳を見つめ返す。
 その途端、雷に打たれたような強い衝撃が走った。
 あまりにも唐突だった為に身構える事もできなかった天使の意識は飛び、力なくその場に崩れ落ちる。
 彼はその様を見やると、倒れた少女を持って満足そうに笑う。
「以前と同じ手にかかるとは…懲りぬ奴だ」
 手に入れた。
 笑みを浮かべながら天使を見下ろす彼の表情は、無邪気な残酷さに満たされていた。
「この事はまだ誰も知らぬ…気付いた時にはもう遅いがな」
 堪え切れずに声に出して笑い出す。
 暫くして周囲に響く笑い声が消えた時、その場には誰一人としていなくなっていたのだった。

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